アパートの鍵貸しますのレビュー・感想・評価
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【生涯ベスト5・第2位】何度観ても感動できるラスト
1960年公開、アメリカ映画。
原題は『The Apartment』
【監督】:ビリー・ワイルダー
【脚本】:ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
主な配役
【鍵を貸して出世する C・C・バクスター】:ジャック・レモン
【部長の愛人 フラン・キューブリック】:シャーリー・マクレーン
【シェルドレイク部長】:フレッド・マクマレイ
1.少し残念だが、すでに名作認定されている。
私だけが認めた、私だけの名作にしておきたいが、
世間はそれを許さないようだ。
アカデミー10部門ノミネートされ、5部門(作品、監督、脚本、美術、編集)で受賞した。
主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞いずれもノミネートに留まったのは不思議だ。
2.邦題に拍手
原題は、単に『The Apartment』だが、それを
『アパートの鍵貸します』とした。
素晴らしい。
当時まだ少なかったが、邦題も『アパート』で通じたはずだ。
もちろん、今と違って当時は、
どれだけ客を呼べる邦題をつけられるか、競い合ってたような空気もあるので直訳はありえなかっただろう。
だが、
私に言わせると史上最悪の邦題『パットン大戦車軍団』のような、「ちゃんと観たんか?」級の駄作もあるので、本作の邦題は💮なのだ。
『アパートお貸しします』でも『アパートの鍵』でもなく、『アパートの鍵貸します』って、センス良すぎ。
3.アイデアとキャスティング
まず、あえて白黒作品としたアイデア。
男女の物語を白黒にしたことで、よりロマンチックでノスタルジックな雰囲気が出せてる、と私は思うし、
「ぼろアパート感」を出しながらも、不潔には感じない絶妙な舞台設定ができている(と思う)。
それでいて、まるでカラー作品を観ているような色彩感はある。魔術のようだ。
(超絶好きな作品であるが故に、自己催眠がかかっているとも言える笑)
ビリー・ワイルダー監督は、『お熱いのがお好き』に出演したジャック・レモンを気に入り、もう1本撮りたいとなったこと。
※本作で有名な、テニスラケットをスパゲッティのざるとして使う場面の鼻歌はジャック・レモンのアドリブ。
◆サラリーマンの悲哀
◆お人好し三枚目の雰囲気
顔はまったく似てはいないが、渥美清のように人を惹きつける魅力がある。
ビリー・ワイルダーは、
ダブル不倫を描いてヒットした『逢いびき(1945年、イギリス)』に着想を得て、不倫ものをアメリカ風にやりたいというアイデアを持っていた。
そこに、
脚本を共同執筆したダイアモンドの(友人の)個人的経験をプラスしてあらすじができたこと。
シャーリー・マクレーンがまた素晴らしい。
地方出身の男運の悪いエレベーターガール。
◆チャーミングだが、無垢ではない。
◆道ならぬ恋をしているが、アバズレ(死語?)ではない。
絶妙ではないか?!
シェルドレイク部長は、当初、ポール・ダグラスと公表されていたが、彼の急死によって急遽代役をオファーされたフレッド・マクマレイがまたハマり過ぎなくらいハマっている。
◆不誠実で尊大だが巨悪というより小悪党
◆どうしようもなくジコチュウ
妻と離婚する、を匂わせながら不倫で遊ぶワルイやつをちょうど良く演じた。
4.何度観ても感動できるラスト
わたしが、
ラストシーンだけで、何度観ても感動できるのは、
『アパートの鍵貸します』と『砂の器』だ。
新年を迎えるパブ。
蛍の光が演奏される。
アパートに向かう彼女の耳に聞こえる銃声。
作中、主役の2人が、
「ジン・ラミー」というカードゲームを2回プレイする。
最初は、心ここにあらずのヒロインと。
2度目は、心を決めたヒロインと。
「Shutup, and deal」(黙って配りなさい)
最初に観たのは、
学生時代に地上波(国営放送だったと記憶している)。
不倫の経験もないのに、感動して泣いた。
素敵だなあ、良かったなあ、
とそれ以降も、
何度で観ても、
同じレベルで感動できる。
本当にこの作品が好きなんだと思う。
ジャック・レモンもシャーリー・マクレーンも好きな俳優だし、ビリー・ワイルダー監督も巨匠だと思うが、
個人的には、3人とも本作がベストだと思う。
☆5.0+α
シリアスとユーモアの見事な融合に…
アカデミー賞では、
主演男優賞・女優賞こそは逃したものの、
作品賞・監督賞・脚本賞の主要3部門他を受賞
した、私にとっては「情婦」と共に
大好きなビリー・ワイルダー作品。
2作品共に、内容は至ってシリアス劇なのだが
作品から滲み出るユーモアのセンスは
どんなコメディ映画も敵わない。
主人公は出世のためなら手段を選ばない
本来は卑下すべき情けない人物なのだが、
何故か憎めきれない。
ある意味、素直な性格の人間像は
ジャック・レモンの演技からも
滲み出ているものなのかも知れない。
今回の再鑑賞では、
終盤での二人の恋愛成就とは異なる方向に
向かっているかに思わせておいての
逆転のエンディングには、
片想いの女性が上役の愛人だったとの事実を
踏まえながら異例の昇進をかなえた男と、
その上役の離婚という自体に
至りながらの女。
その二人がようやく獲得した地位を
捨ててまでも、
たどり着いた相愛への思索の描写が
多少性急過ぎるきらいはあるものの、
それまでの二人の想いの蓄積と、
女の自殺を切っ掛けとして共有した
介抱の時間の賜物だったのだろうと感じた。
この作品、
まともに作ったら、教条主義的な、
場合によっては、あたかも教育映画のように
なりかねないストーリーなのだが、
そこは流石にワイルダー作品、
本当に良く出来た脚本で、
上質なウィットを絡めながらの
各エピソードへの伏線の数々や
誤解の因果関係の設定がお見事!
と言わざるを得ない。
その中で、サブ的な要素ではあるが、
隣家のドクター夫婦が、最後の最後まで
主人公をお盛んな男として誤解している
エピソードが私には大変可笑しかった。
日本では、
チャップリンの「独裁者」
フェリーニの「甘い生活」
ルネ・クレマンの「太陽がいっぱい」
がキネマ旬報でのワンツースリーの年に
第17位と、
日本では今一つの評価だったようだが、
私にとっては、ワイルダーの演出・脚本と、
二人の主演俳優の見事な演技が相まった、
これこそが、シリアスとユーモアの
観点からの見事な融合作品であると、
改めて再確認する鑑賞となった。
目を覚ませ!、人であれ!
君が荒んだ瞳で強がるのが とても痛い
憎むことでいつまでも あいつに縛られないで
ここにいるよ 愛はまだ
ここにいるよ うつむかないで
空と君との間には 今日も 冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら 僕は悪にでもなる
中島みゆき 「空と君とのあいだに」
やっぱり思うんです。古い映画の、違うなーと思う場面と、変わんないなーと思う場面。実は、違うなーの場面は、今の時代が、それだけ改善したってことだと思います。で、変わんないなーの場面は、先代からの宿題が、未だに解決していない。むしろ、悪化していたり。
離婚を撒き餌にする、恋する殿方が不変なのは、自分のDNAをバラ撒きたがる本能。今後も変わらんでしょう。一方で、簡単に手に入るもの欲しくない、興味ない。その代わり、マスカラが使えない恋に恋い焦がれ、身を焦がす。男と女の間には、今日も冷たい雨が降る。誰もが、みゆき姐さんや、瀬戸内寂聴さん並みの生き仏になれるわけじゃないからね。悟りを拓く前に、目を覚まし、人でありましょう。間違えていいんです。迷い続けていいんです。口先だけの愛は不要。目の前の人を、ちゃんと大切にできるなら。
それにさ、格好いいじゃないですか。好きな人のために泥被るって。好きなヒトの前では、格好つけなくちゃ。報われぬ恋だとしても、見栄を切る切なさ。それが自分を救うことだってある…かも。
観たことないですけど、確か「イエスマン」って映画。人生の選択で、ひたすらイエスと答え続けたら、こうなりました、みたいなお話。どんな結末か知りませんが、アパートの鍵貸したら、何か変わるかもね。ヒトはあまねく、結末の知れぬストーリーの真っ只中にいます。ひとりひとりが、主人公です。脇役には、なれません。次のアクション、始まってますよ。
この前のクリスマスは、如何お過ごしでしたか?。次のクリスマスまで、まだ時間があります。この映画観てから、次のクリスマスを迎えてみては如何?。きっと、何かが…。
私のアパートの鍵、貸しませんけど。
和田誠展に行ったので
台詞回しと演出が絶妙に上手い舞台喜劇。
内容は、主人公のアパートメントの鍵を会社の上司にラブホテル代わりに貸し出す事で出世しようとする男と男運の悪い道ならぬ恋をする職場のエレベーターガールとの恋話。印象的な台詞は『物事は全て成り行きだね』色んな意味合いの混ざる思い言葉は、甘くて苦い胸打たれる台詞でした。キャストの表情や間合いで表現される場面はみてい観ていて惹きつけられました。印象的な場面では、最後の空白のクリスマスからの年越しのシーンです。上手く観客の心を惹きつけて落とし所を確保する辺りは上手いなあと感心します。毎回様々な伏線が張られており予想できる安易さも丁度よかったですし、狭い舞台で繰り広げられる人間模様は素晴らしいものがあります。印象的なアイテムは、割れたコンパクトで『割れてるね』『知ってるわ。この方がいいの!私の心を写してる様で…』三幕構成の第一幕終わりでの3人の関係性を知る場面には、演出の妙が巧みに繰り広げられ、ビリーワイルダーの真骨頂を魅せられた様な気になりました。個人的には『He's taker(奪う奴)』との第三者の台詞が好きです。会社の重役との不倫に悩んでいた時に聞かされるとは目も覚めます。正しく宮沢賢治『洞熊学校を卒業した三人』が好きな自分は、思わず現実社会でもアルアルだと思いました。なので、この歳になり周りに友達がいない現実に激しく納得しました。この事件後、主役二人の距離と二人の精神的な成長がハッキリとみられ応援したくなります。そして最後にはハッピーエンド。エンターテイメントでお決まりですが、何故幸せな結末が必要か否か理解出来る様に感じました。テンポの良さと映像伏線の素晴らしさと音楽との相性には映画を見ていて良かったなと思える部分が多分にあり何回も見たい凄い作品です。
後半がなぁ。。。
前半のシチュエーションの面白さと語り口の上手さは もう 天下一品。見事だった。しかし 1時間 終わったところから急にストーリーの展開が止まったように感じた 。やることなすこと全てお決まりで描かなくてもいいシーンをダラダラ 描いてるように見えた。 全ては ラスト へ持っていくための焦らしのようなシーン。 主人公が最後の最後まで受動的で 映画的なドラマ性に欠けると感じた。
ここからは ネタバレです
主人公はお金を儲けたり 出世に役立てるために鍵を貸しているのか、 鍵を貸さなきゃいけないことになっちゃっているのか ?・・やってることが中途半端 。この中途半端な主人公が事の真相を知ったらどんな風に変わってくれるだろう・・というのが一つの期待というか サスペンスになっていて前半は本当に面白かった 。しかし事の真相を知った主人公は何ら変化することなく、 中途半端な奴のままでダラダラと話が続くだけだった。見てる私は飽きて嫌になってきた 。そして、どうにも嫌になってきたところでハッピーエンド 。このタイミングがよくて割とシャンとした映画になった。
実際にはこんな退屈な男のところに こういうタイプの女が自らやってくることは絶対にない。絶対にないというところがモテない男のファンタジーとしてうまくいっていたと感じた。
チャップリンの『モダンタイムス』の様に見えた。
ジジイ目線で終わる寓話。
初見は50年以上前で、我がオジキが好きな映画だった。
ガキだったので、シャーリー・マクレーンを綺麗なお姉さんと見ていた。だから、ファンにはなったが、映画自体は印象に残らなかった。
今回改めて鑑賞して、ジジイ目線で都合良く作られていると感じたが、奥深い所もあるんじゃないかと思った。
摩天楼のシーンから、資本主義経済の犠牲になっている労働者の話のような気がした。まるで、チャップリンの『モダンタイムス』の様に見えた。
ブリシットジョプを60年以上前にこの映画は描いている様に感じる。
具体的に言えば、エレベーターガールなんて、現代では必要のないブリシットジョプだ。また、ここで働く者のほとんどが必要ではない仕事に見える。
そして、アメリカ経済にとって、一番いらないのが、この会社なのではないかと感じた。具体的には、この会社から主な登場人物が去って、この映画は大団円を迎える。
河島英五
よくもまあこんなドロドロとして重苦しいストーリーをユーモアたっぷりに仕上げたものでしょうか。ところどころニンマリしてしまいます。やっぱりビリー・ワイルダーは天才です!
この映画は男のずるさと女の弱さのはざまで展開される物語(やばい、河島英五っぽくなってきた)なんだけどやっぱり男視点の映画と言わざるを得ないのかなって思います。最近、昔の映画を観返していて改めて思うんだけど基本的に映画って男視点?それは監督さんがほとんど男性だから?女性の方々はこのような男視点の映画をどのように楽しめておられるのだろうか?今頃になって疑問がよぎる今日この頃です。
1960年の作品だから今から60年以上前。私が初めて観たのは入社したての30年ほど前。その頃はまだバブルの勢いが残っていてやれ残業だ、出世競争だ、上司へのゴマすりだ、オフィスラブだのがはびこっていた時代だったからこの映画にもとても感情移入したものです。今となっては働き方改革だとかパワハラ撲滅だとかリモートオフィスだとかホワイトカラーの働く環境も大きく変わってしまいました。今の若い人がこの映画観たらどんなふうに感じるんだろう。もし機会があれば、こちらも是非きかせていただきたいです。
ホワイトカラーというのは…
なんてウエルメイドな・・・
まぎらわしいシャンパン
ビリー・ワイルダーの傑作喜劇で、ジャック・レモンもシャーリー・マクレーンも素晴らしい。
主人公(ジャック・レモン)は出世のために、自分のアパートをラブホテルのように、上司に貸し出していた。
密かに想いを寄せていたエレベーターガール(シャーリー・マクレーン)が実は・・・。
こんなコメディを観たいものだ。
2人の間に言葉はいらない
サラリーマンの悲哀と恋愛を描く
プライベートを代償にした出世の顛末
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