用心棒

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

二組のやくざが対立するさびれた宿場町。そこへ一人の浪人者がふらりと流れ着く。男はやがて巧みな策略で双方を戦わせ、最後には自らの刀を抜きやくざたちを倒す。町の平和を取り戻した彼は、またいずこへとも知れず去っていく……。時代劇に西部劇の要素を取り入れた痛快娯楽活劇。ピストルにマフラーのニヒルな殺し屋を演じた新鋭・仲代達矢の存在感が光る。64年にはセルジオ・レオーネ監督が本作をもとにマカロニウエスタン「荒野の用心棒」を作り、大ヒットした。

1961年製作/110分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1961年4月25日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第34回 アカデミー賞(1962年)

ノミネート

衣装デザイン賞(白黒) 村木与四郎

第22回 ベネチア国際映画祭(1961年)

受賞

ボルピ杯(最優秀男優賞) 三船敏郎
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映画レビュー

4.0黒澤明だからこそ作れる作品。

2025年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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すっかん

5.0与えられた秩序の果てにある、精神の荒野

2025年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

『用心棒』は、一見すると痛快な娯楽活劇の傑作である。しかしその裏面には、戦後日本の精神史が抱えた「倫理の源泉喪失」という構造的問題が、容赦なく焼き付けられている。

腐敗しきった町に現れた浪人・三十郎(三船敏郎)は、町を支配する二つの暴力勢力を手玉に取り、互いに壊滅させた上で静かに去っていく。構造は明快だ。だが、三十郎が去った後の町には、秩序の再建も、倫理の回復も描かれない。ただ“空白”だけが残される。

この構図は、戦後の日本に酷似している。すなわち、敗戦によって自ら秩序を構築する能力を失った日本に、外部から善意とも支配ともつかない力(GHQ)が介入し、暫定的な秩序を与えて去っていったという構造そのものだ。町は一応「浄化」されたように見える。だが、その場しのぎの均衡の中に、主体的な理念や倫理の再建はなく、むしろ「内側から倫理を再生できない社会」の空虚さだけが浮き彫りになる。

三十郎は“善意の救済者”というよりは、秩序の狭間にいる裁定者のような存在であり、その不動の姿は、日本が直面した「他律性の罠」とも重なる。外部の力によって表面的に整えられた社会は、内部からは再生しない。そういう未来の不毛さを、『用心棒』は何も語らずに見せてしまっている。

一方で、映画としての完成度は驚異的である。構図、テンポ、音響、殺陣、カット割り──あらゆる技術的要素が最高水準に達している。戦後日本が倫理の基盤を失いながらも、技術力と表層の秩序だけで突き進んできたその姿に、この映画の構造はあまりに似すぎている。

『用心棒』とは、黒澤明が日本という国の精神的な構造を、意図せずして、あるいは無意識のうちにフィルムに刻み込んでしまった作品である。そこに描かれるのは「圧倒的な技術力」と「思想的空洞」とが共存する風景──そしてそれこそが戦後日本の正体だった。

私は黒澤明の作品を順に追って観てきたが、俯瞰してみると、その全体像は戦中・戦後の日本が「主体性・倫理・秩序の源泉」を失っていくプロセスを鏡のように映し出している。

4K UHD Blu-ray (クラリテリオン版)で鑑賞

96点

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neonrg

4.0この映画がなければ、クリント・イーストウッドの現在は無かったかも♪

2025年4月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:その他

この映画がなければ、クリント・イーストウッドの現在は無かったかも♪

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J417

5.0さすらいの素浪人、三十郎ここにあり!

2025年2月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

監督脚本、黒澤明。

【ストーリー】
横風の強いさびれた宿場町・馬目宿。
ふらりと一人の素浪人があらわれる。
男は三十郎と名乗り、まずは一杯の酒を飲む。
店にいた権という名の爺によると、名主の多左衛門と造り酒屋の徳右衛門が対立し、たがいに足下のヤクザたちの対立で、すっかり荒れ果ててしまったという、
宿場町はその名のとおり、生馬の目を抜くようなひどい有り様。
「酒代のかわりに、俺がこの町なんとかしてやる」
男は事もなげにそう言い、肩で風を切り通りへとくりだす。

三十郎主人公の一作めにして、三船敏郎の代表作。
黒澤作品でも最高の剣戟アクションが見られるシリーズ。
まあこの作品、三船敏郎の存在感がすごい。
目ヂカラ、彫りのふかい顔だちもさることながら、躍動感と動きのキレは、本当に魅入ってしまいます。
あのひねくれ者のマーロン・ブランドが敬愛した、野生の象徴かのごとき演技、いや生き様。
カッコいいとかそんなの通りこしてただただ生命力に圧倒されます。

三船敏郎、戦時中は特攻隊員の遺影を撮る仕事をしてたとか。
終戦になって職にあぶれ、東宝の撮影部の求人に応募するもその風貌が気にいられて黒澤作品に出演することに。
破格のエピソードですが、この時期の方々、本当にめちゃくちゃな世界を生きのびてきたんだなと。
殺陣用の模造刀でどうせ切れないんだからと、剣撃を受けてたってエピソードも破格。
殺陣の後に服を脱いだら体じゅうミミズ腫れだらけだったそうですよ。

三船敏郎の、人間力までフィルムに納めた黒澤屈指の魅力的なキャラクター、三十郎。
全人類、必見です。

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かせさん

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